2016/06/18 19:06

ミロンガヌオーバ

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ミロンガヌオーバは、その昔ランボオといい、1947年(昭和22年)出版社によって神保町の路地裏に創立された喫茶店でした。
昼間から酒が飲めるお店ということで、三島由紀夫、遠藤周作、吉行淳之介等の作家と編集者のたまり場になります。
その頃、一人の美少女がウェートレスをしていました。少女は作家たちのアイドル的な存在です。そんな少女に作家のひとりがプロポーズをしました。作家は武田泰淳、美少女は後に武田百合子となります。

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タンゴの音楽が聞こえてきました。ランボオは1949年(昭和24年)になくなり、現在はタンゴの音楽の流れる喫茶店ミロンガヌオーバです。
店内には、バンドネオンが飾ってあり、レジの後ろには古いレコードと蓄音機が置いてありました。

ウエイトレスさんが、注文したメキシカンジャンバラヤとワインを持ってきてくれます。

ミロンガヌオーバの時代になり、平成を迎え一人の女性がウェートレスをしていました。

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春は開け放たれた扉から爽やかな風を感じ
夏にじょうろで路地に水をまき
秋の肌寒さにさびしさを覚え
冬はすきま風に寒さを感じ

ホームレスのあさこと言葉を交わし
ホームレスのジミーが街から追い出されたことを憤り

カウンターの中から

ビールをもう一本注文して、リクエストした「奥さま御手をどうぞ」を聞いて静かに涙ぐみ、帰りがけに「大好きな人と。お別れしたんです。」といったおじさん。

この店で母が働き、父がお客としてきていて、両親の出逢いの場だとお店をスケッチしている若い女性。H280608mironngaburenndoshimada.jpg

タンゴと煙草を愛していた死んだお父さんがこの店によく来ていたからと、むかしお父さんが吸っていたのと同じ煙草に火をつけ、ゆっくりと味わう男性

いろんな人生を見守っていました。

そんな彼女は
2冊のエッセイを残して、
そして、
ミロンガヌオーバの鼓動であるタンゴのリズムがいつまでも止まらないことを願って、
亡くなりました。

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ワインを飲み干して、ミロンガブレンドを注文しました。

珈琲豆を挽いた香ばしいにおいがしてきます。
壁には世界のビールが飾ってありました。

彼女は教えてくれました。
「タンゴは人生そのものだ」と
そして
タンゴの永遠のテーマは
「愛と孤独と」
であると。

神保町タンゴ喫茶劇場 堀ミチヨ 著  新宿書房
神保町書店及びミロンガヌオーバにて販売中です。

島田 敏樹

2016/06/16 19:03

書店ガール

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書店ガールの新刊書店ガール5が、先月販売されました。三省堂神保町店にひっそりと並んでいます。

書店ガールは、2015年にベテラン書店員西岡理子役に稲森いずみさん、若い書店員小幡亜季役にAKB48 渡辺麻友さんでテレビドラマ化されました。

書店ガールの舞台は本の街神保町ではなく、吉祥寺の大型書店でしたが、書店員の物語なので1巻から読んでいました。

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1巻では、小幡亜季の結婚式で上司の西岡理子に結婚式のご祝儀を叩き返すことから、物語は始まります。
何かにつけぶつかりあう二人でした。
職人気質の西岡理子は本を並べることにこだわりがあり、 できればPOPなど置きたくありません。
そんな西岡理子に対して、「頭古―い。今や書店のPOPは常識だってのに」と若い書店員の小幡亜季は反発します。

あるとき、書店が借りているビルが建て替えで家賃が上がり、書店を閉店せざるを得ないと専務に言われました。
書店を閉店したくない理子は、売上を今より500万円上げることを条件に社長に書店の継続の約束を取り付けます。

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そんな理子に、亜紀は書店を守るため協力します。

対立しあう二人でしたが、紙の本とリアル書店が好きなのは同じでした。

社長が任せると言われた電子書籍を、理子が「私はリアル書店で紙の本を売りたい」と断った、と聞いた亜季は
「そうですよね。本屋はちゃんとお店があって、紙の本が並んで、店員とお客様がいるからいいんだわ。」本は「本屋で売っているのが一番素敵に見える」といいます。
理子も、亜紀の言うとおりだ「電子書籍は本ではない。データだ。本屋はお客様や営業の人や書店員、いろいろな人間がいて、直接会って話たり、ときにはぶつかりあって何かが生まれる。本というものを媒介として人と人が繋がっていく。それが書店だ。私が好きな書店だ。」と思いました

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書店ガール4巻からはお話しは、理子と亜季の後輩の愛奈と彩加に移ります。
そして書店ガール5巻では、取手駅構内の店長に抜擢された彩加と、小幡亜季の夫のライトノベルの編集者の小幡伸光のお話しです。
彩加は、自分好みの文芸書中心に並べていた本の売れ行きが悪く、アルバイトの協力を得て、お店の立地にあった本の品揃えや並び方を変えた矢先、新人作家の打ち合わせに編集者の小幡伸光取手の書店に訪れ、彩加に出会います。二人が出会った時、お話しは意外な展開になっていきます。

書店ガール5 碧野 圭著 PHP文芸文庫

 

神保町書店にて販売中です。

島田 敏樹

2016/06/02 19:12

東御苑―花菖蒲

菖蒲に八ッ橋。菖蒲は花札では5月の花です。
花菖蒲は、端午の節句のとき、5月人形や兜と一緒に飾られているのをみかけますが、端午の節句の時にお風呂に入れる葉菖蒲とは異なり、アヤメ科の植物です。
葉の形が、葉菖蒲に似ていて、美しい花が咲くことから、花菖蒲と言われています。

その花菖蒲が、神保町では、皇居東御苑の二の丸庭園で、5月下旬から、6月上旬にみることができます。(詳しい日程は皇居御苑花だより:開花状況を御確認下さい。)

昼休み、花菖蒲を見に行くことにしました。

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千代田通りから、錦橋を超えると、内堀通りに出ます。

内堀通りは、カラフルなジョギングウエアを着て、ジョッキンングをしている人がいました。

内堀通りを皇居のお堀に沿って歩いていくと平川門が見えてきます。

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平川門で、札を貰い、皇居東御苑の中に入りました。

皇居東御苑の中に入り、右側の本丸の天守台に通じる梅林坂とは別の道を進み、諏訪の茶屋という建物を通過しました。

まだ、6月初旬だというのに、トンボが、飛んできます。
昼休みなので、ベンチで弁当を食べている人や、カメラを持って歩いている人や片手にスマホを持っているOL、外国人観光客などがいました。
更に先に行くと二の丸庭園が、見えます。

二の丸庭園の中には、池があり、池の中には鯉が泳いでいて、その先に滝がながれています。

その池の一区画に花菖蒲が、咲いていました。

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花菖蒲は、湿り気のある土地で成育するので、池の中に植えられています。

花菖蒲のまわりには沢山の人がカメラやスマホで写真を撮っていました。制服を着たOLの2人が昼休みに花菖蒲を見に来ていて、スマホを渡され花菖蒲の前で「写真をとって」と頼まれました。

今日の昼間の気温が、熱かった為、やや花菖蒲も暑さに参ったという感じでしたが、それでも、長い茎の上で、紫、薄紫、水色、白等の様々の色の綺麗な花を咲かせていました。

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花菖蒲の美しさに気を取られていると、もう12時30分なっていました。昼食はまだだったので、二の丸公園の休憩室に行き食事をすることにしました。

花菖蒲の植わっている奥の池の右側にある細い道をしばらく行くと竹藪がありました。
その先に、東屋があります。そこが二の丸庭園の休憩室です。
東屋に入ると、涼しくひんやりしました。中には、自動販売機が置いてあり、お茶を買いました。
朝、すずらん通りのキッチン南海の隣にある「おにぎりの小林」で買っておいたおにぎりととゆで卵をレオマカラズヤのカバンから出しました。おにぎりとゆで卵をお茶を飲みながら食べて帰りました。H280602azumayashimada.jpg

島田 敏樹

 

2016/05/29 19:15

第30回神田すずらんまつり

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5月28日(土)に、神田神保町のすずらん通りで、すずらん通り商店街のおまつり第30回神田すずらんまつりが開催されました。
神田すずらんまつりの、第1会場は、和太鼓、スクエアダンス、吹奏楽コンサート、デキシーランドジャズなど、音楽やダンスを中心に行います。
第2会場は、おはなし会、街歩き雑誌「散歩の達人」の20周年スペシャルイべントを行いました。
今回は、第2会場の設置と誘導のお手伝いをしていたので、主に第2会場にいました。
第2会場では11時30分から、おはなし会が始まります。お話し会では、さおりんのおはなしdeショーでは紙芝居を行いました。
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さおりんのお話し会が終わり昼休みになります。昼ご飯を食べに行きました。すずらん通りにワゴンが並んでいて露店が出ています。露店は、綿菓子等の普通のお祭りの食べ物ばかりでなく、すずらん通り界隈の名店が出店していました。
学士会館が肉サンドやメンチカツ、三幸園が肉まんに焼きそばにマンゴー杏仁ドリンク、小林のおにぎりがおにぎり、ティーハウスタカノが紅茶にスコーン、SANGANがインドカレー、豆香房の珈琲などが出店していました。
小林のおにぎりでおにぎりとお茶を買って食べました。

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午後から、散歩の達人の町中華の講座です。
町中華とは昭和初期から開業している大衆的な中華食堂だそうです。神保町でいえば、白山通りにある半チャンラーメン発祥の「さぶちゃん」、パチンコ屋人生劇場のそばの「伊峡」さん、おさんぽ神保町21号の「漱石の学び舎錦華小学校を訪ねて」でお世話になったさくら通りの「成光」さんなどのことらしいです。このような町中華はチェーン店などに押されてなくなりつつあることから、散歩の達人でも毎月ライターが交代で掲載しているそうです。すずらん通りの近くの康楽さんも町中華に含まれ、お話が町中華の出前のお話しとなり、 講座の途中康楽さんに出前を注文していました。おかまちをもった店員さんが味自慢、チャンポン、餃子、オムライス等を持て来て、その場で食べていました。

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その後、劇団神田時組のねぎかぉさんが、古書店のゆるキャラ「メー探偵コショタン」と子供たちに話しかけながら、会場を盛り上げていました。
おはなし会の終わりにコショタンとの撮影会があります。
最後は、散歩の達人の編集長と担当ライターの方と「我々は神保町をどう特集してきたか」の対談を行いました。
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対談には、再開発で移転前の茶房きゃんどる、白山通り西神田のエリカ、李白、ロシアン料理バラライカ、野崎屋刃物店の鶏など昔の神保町風景のお話しが聞けました。
対談は神保町の古書店の話になり、古書店のキントト文庫の書店主の方が、「本は触ってあげた方がいい」「放っておくと寝ちゃうらしいですよ。本の気配がなくなっちゃう。私は、お客さんに向けて本自体に喋ってもらいたい」
と言われたというお話が印象的でした。
散歩の達人は6月号に「神保町すずらん通り」の特集が組まれています。

散歩の達人6月号、交通新聞社

神保町書店にて販売しています。

島田 敏樹

2016/05/22 19:19

幻想古書店で珈琲を―青薔薇の庭園へ

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三省堂の書店員の方が書かれた神保町を舞台としたファンタジー「幻想古書店で珈琲を」の2巻が出ました。

1巻は、主人公名取司が、魔法使いの亜門が店主の珈琲の飲める古書店「止まり木」にアルバイトを始めたところから物語が始まります。「止まり木」は本や人の縁を失った人だけが来店できます。

亜門と司が、来店した人の失った縁を紡いでいくお話しでした。

今回は、1巻で「止まり木」にぶっきら棒に現われ、去って行った亜門と同じ世界の友人コバルトが出てくる物語です。

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コバルトは、亜門をティーパーティに誘いに「止まり木」に訪れますが、亜門が本に夢中になっていました。代わりに司をティーパ―ティに連れて行きます。
ティーパーティは、コバルトの庭園で行います。「止まり木」の扉を開けると新刊書店ではなく、コバルトの庭園の青薔薇園でした。

ティーパーティには、コバルトの他、ミートパイになった三日月うさぎ、ティポットの中で眠っている眠りネズミ、あと一人ティーパーティのゲストが足りません。
招待状を出し忘れたのです。しかもコバルトは招待状を渡す相手も忘れていました。

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司は「不思議の国のアリス」の本を持って招待状を渡す相手を探しに行きます。
途中、パイになった白うさぎに会います。

白うさぎは
「世間の評価に踊らされてはいけない。本質を見極めろ、そうでないと真実は永遠につかめない。」

と教えてくれます。

先に行くと、キノコの上に芋虫の雪だるまがいました。

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雪だるまは
「あなたはだれ」

「あなたが名取司でなくなったら、なんになるの」
と聞いてきました。

そして
「本質を見誤ったままだと、それが真実になる。本質を見抜けないでいると、真実が誤りのままだ。」
といいました。

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更に行くと、チシャ猫に会います。
チシャ猫は
「あんたは自分の軌跡を思い出すといい、誰と、どんなふうに関わった?」
と招待状の相手は誰かのヒントを与えてくれました。
果たして、招待状の相手は誰なのでしょうか。

物語には、ホワイトカレーの神保町チャボ、学士会館とが、出てきました。

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神保町チャボは三省堂神保町本店の裏口から出て、すずらん通りの裏通りを真直ぐ行ったところにあります。
神保町チャボで、司と「止まり木」に訪れた絵本作家の書店員とが海老のホワイトカレーを食べました。

学士会館は、旧帝大7大学の同窓会として、建てられましたが、1階のレストランは、旧帝大の卒業生でない人でも利用できます。
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1階のレストランは、中華の紅楼夢、和食の二色、フランス料理のラタン、軽食喫茶等のセブンズハウズがありました。
セブンズハウスは昼は軽食、夜はビールやカクテル、ティタイムは珈琲とケーキが食べられます。
物語では、亜門と司、司の友人のホラー好きの書店員三谷がセブンズハウスで、学士会館タルトと珈琲を注文しました。

「幻想古書店で珈琲を 青薔薇の庭園へ」

蒼月海里著 ハルキ文庫


神保町書店にて販売中です。

島田 敏樹