2016/11/23 21:42

錦華公園―リス出没

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夏目漱石の卒業した錦華小学校(現御茶ノ水小学校)の隣りに錦華公園という小さな公園が、有ります。 昔、美術学院に通っていたころの松任谷由美さんのお気に入りの場所で、「白い朝まで」で歌われました。 その公園には、得地直美さんの「神保町―モノクロ町画集」に「リスがいるらしい」と書かれています。 錦華公園は都心のビルの谷間にある小さな公園で、周囲には森がなく、森のようなものと言えば、離れたところにある皇居ぐらいです。 もしリスが、錦華公園にいるとしたら、森のある皇居から錦橋を渡って、千代田通りを通り、靖国通りに出て、そこから錦華通りに入り、錦華公園にたどりついたことになりますが、靖国通りの古書店街には、よくぶらぶらと歩いていますが、靖国通りで、リスが歩いているところを見たことなど一度もありませんでした。

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たしかに錦華坂の下には、リスの秋の味覚のどんぐりがいっぱい落ちていましたが、 たぶんリスはいないだろう、いたとしても得地直美さんの「神保町―モノクロ町画集」が描かれたときにはいましたが、今はいないだろうと思っていました。 勤労感謝の日に、勤労者の自分に感謝の意味で、マロニエ通り(とちの木通り)のトラテリアレモンで、ランチを食べました。 トラテリアレモンの前身は喫茶レモンで1968年開業です。 マロリエ通りの入り口の駿河台が60年代日本のカルチャラタン(パリの大学地区)といわれた学生街で、パリのシャンゼリエ通りのようにマロニエの街路樹があるマロニエ通りに面した喫茶店だったことから、70年代が窓から見える街路樹が美しいと歌われたガロの「学生街の喫茶店」のモデルではないかと言われた喫茶店でした。 その後、1978年イタリアレストランとして開設されます。 そこでスパゲッティジェノベーゼを食べ、当時を偲び喫茶店時代からあった苺とグレープフルーツのジュースを飲んだ後、錦華坂を通って帰ろうと、マロニエ通りを左に曲り錦華坂を下ります。 錦華公園の前に来ると、、錦華坂の下から、つながって上に伸びている電線を走って来る物陰がみえました。 物陰は途中で止まり、素早く明治大学の方へ消えていきます。よく見るとそれはリスでした。

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リスの家族が、まだ錦華公園に残っていないか、錦華公園の中に入ってみました。 錦華公園に入り、見上げると明治大学のリバティタワーが見え、10月中旬におさんぽ神保町の夏目漱石の街歩きで、錦華小学校にお邪魔した時は、まだ青々としていた紅葉や銀杏の葉は、ここのところの冷え込みで赤や黄色に染まっていました。

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島田 敏樹

2016/11/15 21:45

神保町―モノクロ町画集

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「本屋図鑑」で絵を描かれた得地直美さんが描いたモノクロ町画集「神保町」夏葉社さんを神保町から先行販売中です。 神保町ブックフェスティバルで、夏葉社さんのワゴンに置いてあり、神保町の書店にも並んでいたので、気になっていたので、東京堂書店さんで買いました。 東京堂書店さんは、「神保町」の先行販売を記念して、軍艦Tシャツも販売しています。 軍艦とは、東京堂書店さんの1階のレジの前にある平台で、棚ざしや面陳列の本棚の下にぐるりと話題の新刊本等が、平積みされているのが、船のようなので、そう呼ばれています。 その東京堂書店さんの軍艦が、以前得地直美さんの「本屋図鑑」で描かれたので、記念のTシャツになったのです。 モノクロ画集「神保町」は、2010年から2016年の神保町の風景をモノクロで描かれていました。 神保町の風景を描かれたものに、下田裕治さんが描かれた「神田百景」(第一通信社発行、創栄社/三省堂発売)があります。

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1984年から2008年までの間の神田の風景を描かれたものです。 下田さんの描かれた時代はちょうどバブルが始まったころで、神保町もバブルに飲み込まれてしまうのではないかと心配されていました。 その頃の神保町の変化は激しく、そこに描かれた風景はもう見ることができなくなってしまったものもあります。 平成12年(2000年)の神保町再開発で、ロシア料理バラライカ、神保町の洋服屋がなくなり、茶房きゃんどるも再開発したビルの中に移転しました。 駿河台下を少し行ったところにあった大正13年(1924年)頃建設された靖国通りの12連長屋も、今では2連になっています。 俎橋から靖国通りの神保町3丁目に佇んでいた昭和2年(1927年)に建設された九段下ビルも平成24年(2012年)に解体されました。

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得地直美さんの描かれた2010年頃からの神保町も、時代の流れと共にゆっくりですが、変化しています。 その時代の描かれた風景も今では見ることができなくなったしまったものもあります。 白山通りにあったスーパーのFjiyaはなくなり、今はドラックストア―になっています。 白山通り側のすずらん通りの入り口にあった床屋さんもなくなり、今では、銀だこになっています。 得地直美さんの描かれた神保町は、失われつつある神保町の風景を記録したものとして、大事にとっておきたいと1冊です。 また、描かれた神保町の風景は、神保町の魅力的な場所の素晴らしい風景を味わいのあるモノクロで描かれているものなので、この本をもってその風景を探しに神保町の街を歩いてみるのも楽しいと思いました。

「神保町」モノクロ町画集 得地直美著 夏葉社は 神保町書店にて、販売中です。

 

島田 敏樹