2018/06/20 17:49
「夢十夜」夏目漱石原作 近藤ようこ漫画
4月11日にオープンした神保町ブックセンターに行ってみました。 神保町ブックセンターのある場所は、大正2年岩波書店が古書店として創業した場所です。 創業にあたって、岩波茂雄さんはその看板の文字を夏目漱石に書いてもらいました。 その翌年、大正3年に岩波書店は夏目漱石の「こころ」を自費出版という形で出版します。岩波書店は漱石の作品を手がけるようになり、大正5年(1916年)12月に漱石が亡くなった後「漱石全集」を刊行し経営を軌道に乗せていきます。
その後、岩波書店は出版社として一ツ橋に移転し、書店の店舗は柴田信さんが代表を務める岩波ブックセンター信山社が借り受けて、営業することになりました。 柴田信さんは神保町ブックフェスティバルを立ち上げる等して、神保町の顔となっていきますが、平成28年(2016年)急死し、書店も閉店されました。 その地で、神保町ブックセンターさんが新しい形の書店として再開されたことは、漱石ファンにとっても、神保町ファンにとっても、柴田信さんを慕う人たちにとっても、うれしいニュースです。 神保町交差点の神保町ブックセンターに着き、中に入ってみると、古い神保町ファンというよりも若い人たちの方が多くいました。
書店の中央にある席に座り、岩波文庫の形をしたメニューをみて、トマトカレーを注文します。 神保町ブックセンターは、ブックカフェとしてオープンし、お店の中で、コーヒー食事お酒まで注文できるようになりました。 トマトカレーが来るまで、書店の棚の並んでいる本を見て回りました。 書店の一区画に夏目漱石の本が並んでいるコーナーがありました。
その中に「夢十夜」の漫画がありました。 「夢十夜」は原作を読んだことがありますが、漫画の幻想的な絵に引き込まれていきます。 第一夜 「もう死にます」女はいう。 「そうかね。もう死ぬのかね。」 「死にますとも、死んだら埋めてください。そうして、百年、私の墓の傍に座って待っていて下さい。きっと逢いに来ますから」 「待っている。」 お姉さんが、カレーとサラダとスープを持ってきてくれました。カレーを食べながら、続きを読みます。
女の云うとおりに男は墓の傍に座り月日が流れていくのを毎日勘定した。 それでも100年はまだ来ない。 しまいには女に騙されたのではなかろうかと思い始めた。 すると石の下から青い茎が伸びてきて、頂きの細長い百合の蕾がふっくらと開いた。 百年はもう来ていたんだなとこのとき初めて気づいた。
「夢十夜」夏目漱石原作 近藤ようこ漫画 岩波書店 神保町書店にて発売中
島田 敏樹