2016/07/07 18:57
栄屋ミルクホール
神田多町に用事があったので、昼は栄屋ミルクホールで食べることにしました。
ミルクホールは、牛乳を飲むことを推奨された明治時代に、主に牛乳を提供することを目的とした飲食店でした。
夏目漱石の「野分」でも、ミルクホールで主人公が牛乳を飲み、学生が洋菓子を食べて、蜜柑の皮をむきその汁を牛乳にたらしていました。
「野分」が発表された明治40年頃では、ミルクホールは、牛乳と洋菓子、蜜柑などを出していたのでしょうか。
栄屋ミルクホールは、神田多町にあります。神保町から、靖国通り小川町を通過すれば、神田多町に着きます。
さっそく靖国通りを多町に向かうと、7月7日の七夕なので、靖国通り沿いには、笹の葉が飾ってありました。
晴天で汗ばむ天気なので、今夜は牽牛は、天の川を超えて織姫に会に行くことができそうです。
靖国通りを青物市場の碑のある通りを曲ると栄屋ミルクホールはありました。
神田多町は昔青物市場があり、1日と8日に縁日が開かれた一八稲荷がある一八通りが賑わっていました。青物市場の碑があるこの通りが、一八通りかと思い地元の人に昔、聞いたことがあります。地元の人はここは多町大通りといい、この通りをさらに行き、突き当りの神田駅に向かう通りが、一八通りだといっていました。
栄屋ミルクホールに着くと、銅版のレトロな看板建築でした。
中に入ってメニューを見ると牛乳はなく、カレーライスとラーメン、おにぎりの軽食があります。
栄屋ミルクホールは昭和20年創業当時は、珈琲や甘味を提供していました。神保町最古の喫茶店茶房きゃんどるが昭和8年創業なので、この当時は喫茶店もあったはずですが、昭和20年には、ミルクホールも喫茶店のように珈琲を出すようになっていたのでしょうか。
栄屋ミルクホールは現在はカレーライスやラーメンを提供しています。
カレーライスを頼むと、もう2時近くになっていたので、「ライスはない」と言われました。
カレーラーメンを注文しました。
カレーラーメンは、東京ラーメンの汁とカレーがあっていて、懐かしい味がします。
もう人の流れが一段落していたので、調理していた店主の方が出てきて、水を入れてくれました。
ラーメンを食べ終わり、料金を払いお店を出ました。
せっかくなので一八通りを通って帰ろうと思い、多町大通りを進み突き当りの一八通りを右に曲りました。
一八通りは江戸の時代から、青物市場として栄えていました。
昭和3年(1928年)に270年続いた青物市場は秋葉原に移ります。その秋葉原の青物市場も平成元年(1989年)に大田市場に移りました。
神田多町は、1丁目が昭和41年(1966年)内神田3丁目に変わりますが、2丁目だけが神田多町の町名に残り、現在神田多町は2丁目だけで、1丁目はありません。
また、神田多町は青物市場がなくなって88年たつ今でも、地元の人は、1日と8日に縁日が開かれ賑わっていたころの神田多町を思い一八通りで野菜直売イベント「一八マルシェ」を開催しています。
そんな気骨のある神田多町の街の中で、栄屋ミルクホールは街の看板建築として佇んでいました。
島田 敏樹
2016/06/24 19:00
神保町ラドリオ
ラドリオは昭和24年(1949年)古書店によって神保町の路地裏にシャンソン喫茶店として創立されます。
そのころの店内は今よりかなり広く、(元)鶴谷洋服店を囲むように現在のART SPOT LADまでがラドリオの店内で、小宮山書店の駐車場の前のLADの扉がラドリオの玄関でした。
店内が広いので、珈琲がこぼれたり冷めたりしないようクリームをホイップして運んだことから、ウインナーコーヒーを発祥したとも言われています。
店内に入ってみました。ラドリオとはスペイン語で煉瓦を意味し、その名のとおりお店の壁ばかりでなく、床やカウンターの椅子の足場も煉瓦になっています。
シャンソンが流れています。前回訪問したときは、越路吹雪の「サン・トワ・マミー」が流れていました。忌野清志郎がカバーして森田芳光監督の映画「バカヤロー」やドラマ「やっぱり猫が好き」で物悲しく歌われていましたが、越路吹雪の「サン・トワ・マミー」は味わいがあります。
ミロンガヌオーバの前身のランボオが昭和24年に閉店後、作家と編集者のたまり場は、ランボオからラドリオに移りました。ランポオもミロンガとして、昭和28年(1953年)ラドリオの創立者の古書店によって再建されます。
作家や編集者等が座る丸椅子のカウンターの中にはラドリオの初代店長臼井愛子さんが女性バーテンダーとして、シェイカーを振っていました。
奥の席に座ると、現在の店長さんがメニューを持ってきてくれました。
お酒のメニューは、生ビール。黒生ビール、ハーフ&ハーフ、グラスワインの白赤、カクテルはジントニック等のジンベースのカクテル、ラドリオ特製マティーニがあります。
ラドリオ特製マティーニを注文しました。
「お酒を注文すると、ラタトゥーユ、チーズ、ナッツのうちから、お通しを選べます。」
と言われたので、ナッツを頼みました。
カウンターの中では、シェーカを振っていた臼井愛子さんはもういませんが、ウエイトレスさんが女優ライトに照らされてお酒のおつまみを作っています。
暫くして、ナッツとマティー二を持ってきてくれました。
マティーニはジンをステア(スプーンで軽くかき回す)で作る透明なお酒です。007の映画ではジェームスボンドが、マティーニをウォカでしかもシェクして作るように求め、お酒にも強い男をアピールしていました。ラドリオ特製マティーニはジンをステアで作ったもののようでした。
お酒を飲み終わりレジに向かいます。
レジの隣りではラドリオのマッチやカップに描かれている牛をデザインした彫刻家本郷新のマドンナ像が店内を見守っていました。
ラドリオはランチにカレーとナポリタン、午後は珈琲とケーキが食べられ、夜はバータイムになります。
島田 敏樹
2016/06/18 19:06
ミロンガヌオーバ
ミロンガヌオーバは、その昔ランボオといい、1947年(昭和22年)出版社によって神保町の路地裏に創立された喫茶店でした。
昼間から酒が飲めるお店ということで、三島由紀夫、遠藤周作、吉行淳之介等の作家と編集者のたまり場になります。
その頃、一人の美少女がウェートレスをしていました。少女は作家たちのアイドル的な存在です。そんな少女に作家のひとりがプロポーズをしました。作家は武田泰淳、美少女は後に武田百合子となります。
タンゴの音楽が聞こえてきました。ランボオは1949年(昭和24年)になくなり、現在はタンゴの音楽の流れる喫茶店ミロンガヌオーバです。
店内には、バンドネオンが飾ってあり、レジの後ろには古いレコードと蓄音機が置いてありました。
ウエイトレスさんが、注文したメキシカンジャンバラヤとワインを持ってきてくれます。
ミロンガヌオーバの時代になり、平成を迎え一人の女性がウェートレスをしていました。
春は開け放たれた扉から爽やかな風を感じ
夏にじょうろで路地に水をまき
秋の肌寒さにさびしさを覚え
冬はすきま風に寒さを感じ
ホームレスのあさこと言葉を交わし
ホームレスのジミーが街から追い出されたことを憤り
カウンターの中から
ビールをもう一本注文して、リクエストした「奥さま御手をどうぞ」を聞いて静かに涙ぐみ、帰りがけに「大好きな人と。お別れしたんです。」といったおじさん。
この店で母が働き、父がお客としてきていて、両親の出逢いの場だとお店をスケッチしている若い女性。
タンゴと煙草を愛していた死んだお父さんがこの店によく来ていたからと、むかしお父さんが吸っていたのと同じ煙草に火をつけ、ゆっくりと味わう男性
いろんな人生を見守っていました。
そんな彼女は
2冊のエッセイを残して、
そして、
ミロンガヌオーバの鼓動であるタンゴのリズムがいつまでも止まらないことを願って、
亡くなりました。
ワインを飲み干して、ミロンガブレンドを注文しました。
珈琲豆を挽いた香ばしいにおいがしてきます。
壁には世界のビールが飾ってありました。
彼女は教えてくれました。
「タンゴは人生そのものだ」と
そして
タンゴの永遠のテーマは
「愛と孤独と」
であると。
神保町タンゴ喫茶劇場 堀ミチヨ 著 新宿書房
神保町書店及びミロンガヌオーバにて販売中です。
島田 敏樹
2016/06/16 19:03
書店ガール
書店ガールの新刊書店ガール5が、先月販売されました。三省堂神保町店にひっそりと並んでいます。
書店ガールは、2015年にベテラン書店員西岡理子役に稲森いずみさん、若い書店員小幡亜季役にAKB48 渡辺麻友さんでテレビドラマ化されました。
書店ガールの舞台は本の街神保町ではなく、吉祥寺の大型書店でしたが、書店員の物語なので1巻から読んでいました。
1巻では、小幡亜季の結婚式で上司の西岡理子に結婚式のご祝儀を叩き返すことから、物語は始まります。
何かにつけぶつかりあう二人でした。
職人気質の西岡理子は本を並べることにこだわりがあり、 できればPOPなど置きたくありません。
そんな西岡理子に対して、「頭古―い。今や書店のPOPは常識だってのに」と若い書店員の小幡亜季は反発します。
あるとき、書店が借りているビルが建て替えで家賃が上がり、書店を閉店せざるを得ないと専務に言われました。
書店を閉店したくない理子は、売上を今より500万円上げることを条件に社長に書店の継続の約束を取り付けます。
そんな理子に、亜紀は書店を守るため協力します。
対立しあう二人でしたが、紙の本とリアル書店が好きなのは同じでした。
社長が任せると言われた電子書籍を、理子が「私はリアル書店で紙の本を売りたい」と断った、と聞いた亜季は
「そうですよね。本屋はちゃんとお店があって、紙の本が並んで、店員とお客様がいるからいいんだわ。」本は「本屋で売っているのが一番素敵に見える」といいます。
理子も、亜紀の言うとおりだ「電子書籍は本ではない。データだ。本屋はお客様や営業の人や書店員、いろいろな人間がいて、直接会って話たり、ときにはぶつかりあって何かが生まれる。本というものを媒介として人と人が繋がっていく。それが書店だ。私が好きな書店だ。」と思いました
書店ガール4巻からはお話しは、理子と亜季の後輩の愛奈と彩加に移ります。
そして書店ガール5巻では、取手駅構内の店長に抜擢された彩加と、小幡亜季の夫のライトノベルの編集者の小幡伸光のお話しです。
彩加は、自分好みの文芸書中心に並べていた本の売れ行きが悪く、アルバイトの協力を得て、お店の立地にあった本の品揃えや並び方を変えた矢先、新人作家の打ち合わせに編集者の小幡伸光取手の書店に訪れ、彩加に出会います。二人が出会った時、お話しは意外な展開になっていきます。
書店ガール5 碧野 圭著 PHP文芸文庫
神保町書店にて販売中です。
島田 敏樹
2016/06/02 19:12
東御苑―花菖蒲
菖蒲に八ッ橋。菖蒲は花札では5月の花です。
花菖蒲は、端午の節句のとき、5月人形や兜と一緒に飾られているのをみかけますが、端午の節句の時にお風呂に入れる葉菖蒲とは異なり、アヤメ科の植物です。
葉の形が、葉菖蒲に似ていて、美しい花が咲くことから、花菖蒲と言われています。
その花菖蒲が、神保町では、皇居東御苑の二の丸庭園で、5月下旬から、6月上旬にみることができます。(詳しい日程は皇居御苑花だより:開花状況を御確認下さい。)
昼休み、花菖蒲を見に行くことにしました。
千代田通りから、錦橋を超えると、内堀通りに出ます。
内堀通りは、カラフルなジョギングウエアを着て、ジョッキンングをしている人がいました。
内堀通りを皇居のお堀に沿って歩いていくと平川門が見えてきます。
平川門で、札を貰い、皇居東御苑の中に入りました。
皇居東御苑の中に入り、右側の本丸の天守台に通じる梅林坂とは別の道を進み、諏訪の茶屋という建物を通過しました。
まだ、6月初旬だというのに、トンボが、飛んできます。
昼休みなので、ベンチで弁当を食べている人や、カメラを持って歩いている人や片手にスマホを持っているOL、外国人観光客などがいました。
更に先に行くと二の丸庭園が、見えます。
二の丸庭園の中には、池があり、池の中には鯉が泳いでいて、その先に滝がながれています。
その池の一区画に花菖蒲が、咲いていました。
花菖蒲は、湿り気のある土地で成育するので、池の中に植えられています。
花菖蒲のまわりには沢山の人がカメラやスマホで写真を撮っていました。制服を着たOLの2人が昼休みに花菖蒲を見に来ていて、スマホを渡され花菖蒲の前で「写真をとって」と頼まれました。
今日の昼間の気温が、熱かった為、やや花菖蒲も暑さに参ったという感じでしたが、それでも、長い茎の上で、紫、薄紫、水色、白等の様々の色の綺麗な花を咲かせていました。
花菖蒲の美しさに気を取られていると、もう12時30分なっていました。昼食はまだだったので、二の丸公園の休憩室に行き食事をすることにしました。
花菖蒲の植わっている奥の池の右側にある細い道をしばらく行くと竹藪がありました。
その先に、東屋があります。そこが二の丸庭園の休憩室です。
東屋に入ると、涼しくひんやりしました。中には、自動販売機が置いてあり、お茶を買いました。
朝、すずらん通りのキッチン南海の隣にある「おにぎりの小林」で買っておいたおにぎりととゆで卵をレオマカラズヤのカバンから出しました。おにぎりとゆで卵をお茶を飲みながら食べて帰りました。
島田 敏樹