2022/04/05 15:07

「ようこそ本の街、神保町へ!」 No4. 山吹書房さん

今回の取材は山吹書房さん。店長は松井芳之さん(43)。

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2年ぶりの古本祭りが終わったばかりの取材のアポイントに応じてくれた。店は平成29年に開業。郷土史を中心とした主に歴史関係を扱う書店を営んでいる。地域色が強い、人名が入ったものを仕入れているという。店に陳列される本はジャンル別ではなく地域順、都道府県順にごとになっている。ネット関係の注文は年齢、性別問わないが顧客は地方の方からの注文割合が多い。またお昼時には近くに務めているサラリーマンがふらりと店を訪れるという。店長自身も文学作品は読むほうではなく、気になったことを調べるツールとして本を読んでいるという。歴史や旅行が趣味で郷土史を中心とした店のラインナップに。ところで古書店の本棚は店主の個性が色濃く現れる。ある人いわく、本には買い方があるそうだ。読み通す本、最後まで読まない本、まったく読まない本。はじめから読むことを前提としないで買う本もある。筆者も仕事柄、年間たくさんの本を購入するが最初から最後まで読み通す本は恥ずかしながらほとんどない。それでもその本を読まずに持っているだけで満たされているという感覚がどこか本好きの人にはあるのではないかと思う。本に対する向き合い方は人それぞれなのだ

久しぶりの古本祭りを終えて

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コロナの影響でこれまでに開催されていたいろいろなイベントが中止に追い込まれた。そのような中、今年は古本祭りが3月17日から21日まで2年ぶりに開催された。期間中の天気のほうは今ひとつではあったが事前の予報よりはまだ良かったといえる。雨の日以外は靖国通り沿いの書店には道行く多くの人が足を止めて見入っているコロナ前では当たり前であった久しぶりに賑わう光景がそこにあった。それだけこの神保町の古本祭りは本好きの人には待ちかねたイベントだったにちがいない。 現在連盟の役員をつとめているという松井氏。今回のイベントはなかなか状況が読めず、開催決定の告知を十分にできなかった中でどれだけの方に来ていただけるか心配していたが、ふたを開けてみると思った以上に賑わっていたのでほっとしたと語ってくれた。こうしたイベントは連盟の書店のみなさんはじめ神保町の街を大切にする一人ひとりのスタッフの皆さんの支えによって続いていることを私たちは忘れないでおきたい。今回久しぶりの古本祭りが開催されたことは明るいニュース。早くふつうの日常が戻ってくれることを多くの神保町ファンと一緒に祈るばかりだ。

最後に一言

自分の出身地の本や、興味があって面白そうな本を手に取って見に来てください。

山吹書房松井さん、ありがとうございました!

ライター:みずも

2022/02/15 10:25

しゃれこうべ句会

こんにちは。菜摘です。
遅ればせながら、本年もよろしくお願いいたします。

本日は「しゃれこうべ句会」についてご紹介します!

皆さんは、神保町にある「しゃれこうべ」というバーをご存じでしょうか。
路地にひっそりと佇む、あたたかな雰囲気のバーです。
そんなしゃれこうべで「句会をしている」と知り、遂に参加しました。
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1⽉のしゃれこうべ句会は、記念すべき第90回⽬!(おめでとうございます!)
句会が始まったのは2007年5⽉で、もう15年ほど続いている会だそうです。
90回目のその日には1回目から参加されている方々もいらっしゃって、名実ともに歴史のある会なのだなと改めてしみじみ。

句会と聞くとお堅いイメージがありますが、しゃれこうべの句会は時に笑いが起こる気さくで楽しい会でした。また、俳句初心者も大歓迎とのことです。ここからは、句会にどのように参加するのか 流れをご説明しつつ、90回目の様子もお伝えしていきたいと思います♬

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①参加表明
まずは「しゃれこうべ」を訪れて句会への参加表明をしてください。
店主の真⾐さんが、兼題(お題。俳句の中に入れ込む単語)や句会開催⽇・投句の締め切り⽇を教えてくれます。ちなみに句会は2カ⽉に⼀度、⾦曜⽇の夜に開催されています。
*現在、しゃれこうべは、午後7 時〜9 時までの営業です。
 通常営業は午後7 時〜11 時半です。
 営業時間の変更はしゃれこうべの公式Twitter でご確認ください。
(『しゃれこうべ 神保町の気楽な酒場』 https://twitter.com/fv_sxw
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②メールで投句(俳句を応募)します。
是⾮、俳号(俳句を詠むときのペンネーム)も考えて⼀緒に送ってくださいね♬
ご参加者の中にはご自身が詠み好評だった句から俳号を取り「⾦盥」(かなだらい)とした方も! 真衣さんの俳号は、井伏鱒二の小説「珍品堂主人」のタイトルから「珍品堂」です。
「俳号を何にしようか迷っています」とカウンターで真衣さんや常連さんに相談するのも楽しいひとときです。
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③句会当⽇、しゃれこうべに⾏く
90回目にはアメリカからの留学⽣の⽅や、娘さんに誘われて親⼦でご参加される⽅なども。神保町らしい開かれた空気の中、初めましての方もすぐに打ち解け、お話も弾んでいらっしゃいました。
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④採点表を受け取り、採点する
採点表には、俳号が伏せられた状態で句がずらり。
⾃由な気持ちで気に⼊った句に点数を⼊れましょう。
なんと、マイナス票を⼊れることもできます!
『マイナスなんて…』とお思いの⽅、ご安⼼ください。
マイナス票は『笑点の座布団没収のような「愛情表現」』だそうです。
また、敢えてマイナス票を狙う強者もいらっしゃるとか!(笑)

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⑤採点結果を待ちつつ、おでんをつまみお酒を飲む
「句会の⽇はおでん」と決まっていて、カウンターにほかほかのおでんがお待ちかねです。どの具も出汁が良く染みてとても美味しかったのですが、この日は特に⼿作りの⽜筋串が⼤好評。私もたくさんおかわりしてしまいました。福井名物「へしこ」の差し入れもとても美味しかったです。
また、今回は「90 回記念」且つ「新年」ということで、沢⼭の⽇本酒の差し⼊れも!信州の甕酒、上州の⼈気酒蔵の⽇本酒、そしてしゃれこうべからは神保町「柿島酒店」で仕⼊れたとびきりの⽇本酒⼆種…という豪華ラインナップです!
私は皆さんから傾けていただく日本酒瓶に嬉し恥ずかし「頂戴します」を繰り返した結果、早々にふわふわ幸せな心持ちに。
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⑥採点結果の発表
順番に俳句が読まれ、それぞれの俳句に対する得票数の発表があります。
その合間合間に参加者の皆さんからの感想・コメントも交わされます。
「どんな情景を詠んだものか。私はこう解釈して点を⼊れたけれど合っている?」「ここは『た』ではなく『か』にした⽅がいいと思う」「季語が⼊っていないぞ?」といったアカデミックな(!)議論から、「キミの句だったらもっと点数を⼊れたのに!」はたまた、「キミの句だったら点数⼊れなかった!」「やっぱりキミだったか」等々の冗談も⾶び交い、初⼼者も常連さんも関係なく、笑って学ぶ時間に間に引き込まれていきます。
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さて・・・
今回の句会は、兼題(句に⼊れる単語)はなし、テーマは新春句でした。
栄えある⼀位は
「暗闇に 去年残し⾏く 雪の下駄」
でした。かっこいい!夜中に雪の上を歩くと下駄の⾜跡が残る。その⾜跡は去った年のものになっていく、去年に残していきましょう…といった意味合いでしょうか。⾵情を感じるキリリと男前な句です。

折⾓なので、⼊選された句をここでお披露⽬させてください!
「寒に⼊る葉のなき枝に⼩さき芽」
「五円投げ⼗も願うか初詣」

皆さん、視点・発想…本当に素晴らしくて惚れ惚れです。

読者の皆様は「エー、そんな立派な句は作れない、ハードルが高すぎる」と思われたでしょう。ご安心ください。
ここで朗報です。
我が身を挺して菜摘(俳号:奈津川)による⼀句をご紹介。
「願い事 まとまらぬまま 初詣」
・・・。
これは俳句?という疑問はさておき、どうでしょうグッと参加しやすくなりましたね(泣)? そう、「しゃれこうべ句会」は由緒ある俳句の賞を受賞する方から初心者まで、層が厚く、懐が深いのです!ありがたい…。

更に、私の間の抜けた句に点数を⼊れてくださる⽅も!やったー!嬉しい!
句会の先輩方の総評によりますと「素直な気持ちで詠まれていて良い」とのこと。

また、こんなお話もいただきました。
「⾃分で句を作るのも楽しいけれど、⼈の作った句から情景やその⼈の思いを想像するのも楽しみの一つ」「何か一つのテーマについて、みんなが持ち寄った とりどりの俳句が並ぶのは、何度参加しても良いなあと思う」
たった17 音の日本語で、⼈と共感しあえたり想像の世界を拡げたりできるのは、本当に楽しいことだとしみじみ感じるお⾔葉でした。
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(季語を調べる「俳句歳時記」は入手することをおすすめします!
私は祖母からお下がりをもらいました(*^^*))

「今年は何か新しいことをしたいと思ってたのに、もう春になってしまう…」
なんて思われている方、俳句はいかがでしょうか?
高価な道具も要らないし、場所を取らず場所を選ばず取り組める趣味です。
ちょっとした気分転換にももってこいです♬
しかも、しゃれこうべ句会に参加すれば、素敵な趣味仲間の皆さんができることもお約束されています。

次回「しゃれこうべ句会」は3⽉の開催で、兼題は「夜」だそうです。
ちょっとでも気になった皆さん、是非しゃれこうべへ!

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■しゃれこうべ 公式SNS
Twitter https://twitter.com/fv_sxw
Instagram https://www.instagram.com/sharekobe1980/

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■こぼれ話 歴代マスターと店名の由来
3代目店主の真衣さんは、現在 神保町の老舗古本屋さんと「しゃれこうべ」の二足の草鞋。もともとは、しゃれこうべの常連さんだったそうですが、しゃれこうべの2代目店主からお店を畳むと聞き「自分が継ぐ!」と手を挙げたそうです。
その2代目の店主も、元々はしゃれこうべの常連さんで、初代店主が店を畳むことを決めたと知り、「自分が継ぐ!」と名乗り出た方だそうです。
しゃれこうべのお客さんたちは今日もお店で幸せそうに寛いでいます。皆さんの拠り所となる場所が、お店を愛している人に継がれて続いていくことは、本当に素敵なことだと感じます。
ちなみに初代の店主は、お酒が好きで公務員を早期退職してこの場所にバーを開いたのだそうです。酒呑み仲間の皆さんが見つけてくれることを願い、よく酒場で歌っていた シチリア民謡であり反戦歌でもある「しゃれこうべと大砲」から店名を決めたそうです。「しゃれこうべ」と聞くと、『武骨な店主が~』と想像したものですが、このように初代店主さんのエピソードはぬくもりに溢れたものばかりです。

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■P.S.
2022年も早2か月が過ぎようとしていますが、
相変わらず「神保町は人望町だ」と感じる日々です。
神保町に集う人々は人望が厚い方が多いと感じています。
人望が厚い方に、また人望が厚い方が吸い寄せられて、どんどん、どんどん、素晴らしい方が神保町に集まってくる…そうして神保町の町自体が、人望が厚い町のような状態になり、素敵な人たちを放さない…そんな気さえしてきます。
私もいつか、少しでも、(おこがましい話かもしれませんが)この町の役に立てたらいいなという思いで、今年も神保町の人々やお店を紹介していきたいと思います!
どうぞよろしくお願いいたします。
今更の、今年の抱負でした。

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菜摘

2022/02/12 16:06

「ようこそ本の街、神保町へ!」 No3. 羊頭書房さん

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今回の取材は羊頭書房の河野宏さん(56)。最初はネットでやっていた時期があり神保町に来たのが2000年4月。店では主にSF、ミステリー、ホラー作品、手品関係の書籍をメインに文庫、洋書も扱っている。どこか他の書店で修業してきたわけでなく自分が好きだったわかりやすいところから始めたと店の出自を語る。来るお客さんはミステリー好きな人、手品の本を探しに来たりする人や若い人たちだそうだ。エンターテイメントになるので大学や学術機関の関係者といった人は来ないが、なかには個人的な趣味で来ている人もいるのだとか。この仕事をやっていくうちにお客さんのニーズもわかってきて始めた時よりジャンルが広がっていったという。SF、ホラーが好きな人はもともと好奇心が旺盛で好きなものにとことん拘るという傾向の人が多いようだ。コアなファンのニーズをつかまえる。ニッチな商売を続けていくどの業界にも通じる原点なのかもしれない。なお店長自身は手品やらないという。このようにいろいろなジャンルの本が集まるのが神保町のひとつの魅力ではないだろうか。本棚に目を向けると一冊ずつパッケージされた洋書などもならんでいる。古本は人の手を通っているのでどうしても痛んでしまう。とくにペーパーバックはバインド(本綴じ)が弱いためパッケージは店でやっているという。

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本の街の灯をたやさない

ここに来た頃はまだ再開発もやっていなかった。周りは取次店なども多かったし、昭和の建物もたくさん建っていた、と河野さん。神保町一丁目南部地区はかつて東京大型都市再生プロジェクトとして千代田区が1990年に再開発基本計画を作成。当時借地権者、地主の複雑な権利調整を行い10年以上の歳月を経て現在の大規模オフィス、店舗、都市型住宅の街に生まれ変わったエリアで、店はその近くに隣接する。神保町に店を構えることになった理由は書店というのは駅の近くでないと人が来ないけれど、本の街、神保町だったら離れていても人が来てくれる。それに古書会館が近く、荷物の出し入れも便利だから。さらに続く、「神田古本祭りのときはやはり相乗効果があるし、とてもいいイベントだと思う。このコロナでしばらく中止されているが、日本の本をさがしに外国人の人も来ていた。実際にいろいろな本を手に取ってさわれる、今は当たり前のように感じることもいずれレアな体験になるかもしれない。」たしかに開業する古書店が少なくなっていっているという。

街の文化をまもる・・・

今後も厳しくなっていくかも知れないが、本の街の灯を絶やしたくない。そのための一助としてがんばっていきたいと慎ましく語ってくれた。

 

最後に一言

SF・ミステリーなど文庫、洋書をそろえ、手品・パズルなど特殊な趣味ものも扱っているお店です。是非お越しください。

 

羊頭書房河野さん、ありがとうございました!

 

取材日 2022.2.5 ライター:みずも

2022/01/15 16:11

「ようこそ本の街、神保町へ!」

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今年最初の取材は神田古書店連盟会長、魚山堂書店の伊藤俊一さん(65)。魚山という名前の由来は仏教の称名の流派なのだそうだ。開業はバブルがはじけた1991年に品川からスタート。その後神保町に移ってからは20年位になる。なぜ活字の本ではなく、写真の本を中心に取り扱うことにしたかたずねると、「人のやってないことをやろう、ライバルもいなくて写真を扱っているところは少なく、面白かったから。」おもな得意客は外国人だったという。実際店で扱っている商品でひとつ見せてもらったのが戦時中のプロパガンダ誌。それは当時の軍国主義だった日本がやっていたことを正当化するもので、戦争体験のない私たちにも当時の世界で起こっていた生々しい出来事として写真と共に目の前に飛び込んでくる。戦争からはじまり近現代史に通じていく。他にもファインアートに官能的な写真などジャンルは様々でそこに面白さがあるとも語ってくれた。活字の本は読んで咀嚼し私たちの感情にせまってくるが、写真の本はそれを見た瞬間に私たちの直観に訴えてくるという違いにあらためて気づかされた。店の壁にかけてある一枚の写真からでもその人がいったいどんな人生を歩んできたのか、そんな想像を駆り立ててくれるのだ。

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―神保町の書店街とこれから

ここ20年を振り返ってみると商品にも波があり、今は中国ものが幅を利かせているが当時写真は海外の需要があった。だがリーマンショック以降は大分様子が変わり、本屋自体が正直厳しくなったと語る。それこそ本屋に行列ができるなど聞いたことがないと伊藤氏。昭和から平成、そして令和と私たちは生きている。時代のながれに置き去りにされようとしているものがある一方で、最近ではレコードや昭和のレトロな雰囲気の喫茶店など古き良き時代に憧れて若い客層が列をつくり、息を吹き返そうとしているところもある。なんとも皮肉な現象だ。

ここ神田神保町でも10年で新規に開業して活躍している人はそう多くはなのだそうだ。とにかく、若い人が育ってきていない。今はネットで本でも何でも買えてしまう時代。その影響は確かにある。このままだと神保町の顔である書店街の火が消えかねない。折しも神保町のひとつのシンボルである岩波ホールがコロナの影響で閉館が決まったという報道があったばかり。多くの映画ファンやこの街をこよなく愛する人たちにはどれだけ大きなショックだったことか。

本屋だけでは太刀打ちできない。しかしここ神保町にはカレー屋やラーメン屋など数多くの飲食店があり、そうした異なる業種とのコラボレーションは十分考えられる。また神保町シアターといった若者も引きつけられる施設もあるのだ。さらに文化の保護に手厚い千代田区をバックに、区の商店街の活性化を研究している大学のゼミもあり、若者との接点をつくれる機会はありそうだ。なお神田古書店連盟では BOOKTOWNじんぼう (jimbou.info)というネット発信も行っている。書店の街、神保町には底力がまだまだたくさんある。

―最後に一言

一人でも多くの人に神保町に来てもらいたい・・・街の灯を消さないよう、その言葉は神保町を愛する人すべての気持ちを表していると思う。

魚山堂書店 伊藤さん、ありがとうございました。これからも神保町の顔、書店のみなさんを応援していきます!

 

取材日 2022.1.13 ライター:みずも

2021/12/07 16:16

「ようこそ本の街、神保町へ!」 No1. うたたね文庫さん

神保町は言わずと知れた本の街である。私たちは自分の探している本を求めて書店を訪ねる。しかしここ神保町はたくさんの専門書店があり、一体どこを訪れていいか迷ってしまうことはないだろうか。本企画はそんな本の街、神保町の顔である書店を一軒一軒訪ね、この街の魅力とこれからをありのまま伝えようというものである。第一回目の取材はうたたね文庫、篠田英明さん(53)神田古書店連盟の広報を担当している。

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取材で事務所を訪れると、そこには所狭しと堆い仏教関係の書籍の山が。20年ほど前に開業、“うたたね”と平仮名の店名はまだ当時は少なかった。以前はすずらん通りにも店舗をかまえていて2回の引っ越し行い、現在は店舗を構えず事務所で営業をしている。以前は自身が好きで心理学やプロレスの本も扱っていたのだそうだ。他店の扱わないものをそろえるというのも実際やってみると難しいところもあったという。主な得意先はお寺、仏教好き、大学関係者。一般的に本には再販制度というものがあるが、うたたね文庫さんで扱う書籍は一般書とはちがう特別なものが多い。価格は一律ではなく、相場をみながら商売の勘で決めているとのこと。高い本は実際見て買う人が多くコロナでも関係なく来る人はいると語る。

―古書店街の魅力は?

言い尽くされた感はあるがひとつのお店で見当たらなくても文学、美術、ポップカルチャーなど様々な本があって一日で回るのはむずかしいけれどここに来れば何かしら見つかる、街全体が本のデパートというところ。電子書籍もいいが何回もスクロールしないといけないし、年齢とともに読みにくさも感じる。仏教書の写本など、そこにしか書けない細かい文字、時間が経っても色あせてない紙の風合い、一筆書きで間違いが許されない。たとえば口伝の祈祷のしきたりなどもリアルに描きとっている写本も見せてもらい(写真)、電子書籍には出せない紙ならではの味わいが伝わってくる。

―これからの神保町

とにかくコロナが落ち着かないとしょうがない、通常の営業にもどっていない。来年の古本祭りについて千代田区は前向きのようだが、果たして開催されればいいが・・・

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あとは、神田古書会館の地下で(金、土)即売会やっているがこれがほとんど告知されていない。来ている人の9割が65歳以上で、これからも続けていくことを考えるともっと若い人にも来てほしいと語ってくれた。取材後、実際に近くの古書会館に行ってみると来ている人は高齢者が目立ち、知る人ぞ知るという販売会の雰囲気。こうした催しが定期的に行われているのは神保町ならではと思うと確かに可能なかたちでもう少し広告を出してもいいのではないだろうか。

―筆者の実家もかつて書店を営んでいた。書店は文化、教養を支える縁の下の力持ち、と考えている。コロナ禍のいま、本の街神保町を支えします!

―最後に一言

仏教書の和本、写本はご相談ください。

うたたね文庫 篠田さん、ありがとうございました。

 

取材日 2021.12.4 ライター:みずも