2022/09/29 18:57
「ようこそ本の街、神保町へ!」 No.9 矢口書店さん
今回紹介するのは矢口書店さん。取材に応じてくれたのは矢口哲也さん(59)。創業は1918年、の祖父の代に。映画・演劇・演芸・シナリオ・戯曲を専門に扱っている古書店だ。先代の父のときに映画、演劇というジャンルを取り扱いはじめ、今の矢口さんの代に更に演芸を加えていった。実際に専門にしたのは昭和50年だが、それ以前からもそのジャンルを扱う神保町の専門書店としてキネマ旬報にも紹介されていたのだそうだ。今では映画関係などを扱っている書店も増えているが、その当時はまだこの分野を扱っている店は珍しかった。店を訪れる人は脚本家、役者になりたい人、プロからアマチュアまでさまざま。その中には映画ファンでなくても多くの人が知っているあの有名な映画監督の名前まであがる。いろいろな世代の人たちが来るが昔に比べると子供の姿は少なくなった。それこそ僕たちが子供の頃はゴジラシリーズや東映まんがまつり、洋画のはしごをしてプログラムを買いに来ていたりしたものだった、と矢口さん。その手には「2001年宇宙の旅」の当時の映画のチラシが。店長と年齢の近い50代半ばの私にも懐かしい記憶がよみがえる。また店には共立女子学園や明治大学といった近くの学校、大学の演劇部の生徒や学生たちが店に広告の依頼や取材のため訪ねてくるという。そうした光景はまさにここ神保町という場所ならでは。もしかするとその中から明日のスターや名監督たちが現れるかも知れない・・・
このコロナで日本だけでなく世界中でも演劇、コンサートなどは中止を余儀なくされたことがあったのは周知のとおり。そのため中国、欧米など外国のコレクター、バイヤーも来なくなった。以前はアメリカのアジア映画を取り上げる大学の関係者が来ていたり、中国のバイヤーでは寺山修司が人気でその作品を買い求める姿もあった。そしてようやくコロナの第7波も収束へ。この10月にも古本まつり開催予定で活気がもどりつつある。
コロナで古書店が新しく生まれ変わろうとしている
コロナの影響はマイナスばかりではない。大きく通信販売にシフトしたことだ。それをけん引しているのはBOOKTOWNじんぼう (jimbou.info)、日本の古本屋 / 全国900店の古書店が出店、在庫600万冊から古書を探そう (kosho.or.jp)の2つのサイト。まだ訪れたことのない人はこの機会に是非アクセスを。「じんぼう」は以前この連載ブログでも紹介したが千代田区が予算を出して昨年2021年に新しくリリースされた。このサイトは神田神保町のオフィシャルサイトで古書店130店と数百万点の書物、アート作品が集められ、コロナ禍で神保町の古書店に実際に足を運べなくてもパノラマ写真のバーチャル店舗で神保町散歩気分を味わえる。またもうひとつの「日本の古本屋」は東京都古書籍商業協同組合が運営し、約980書店が参加、約600万冊の本が探せる国内最大規模の古書店ECサイトで近くリニューアルする予定だという。矢口さんは語る。うちも通販が増えた。お客さんも無駄なものを買わなくて済むし、送料が安いので地下鉄に乗ってここ(神保町)に来る方が高くつく場合もある。ただ通販サイトに載っているものを見て実物を見に来たり、神保町シアターで特集をみて面白かったのでその関連のものをさがしに店を訪ねてくるお客さんもいるのだと。実店舗と仮想店舗。このハイブリットなプレゼンがますますこれからの書店のひとつの姿になっていくのではないだろうか。
※写真下は六代目三遊亭圓生が記した俳句・俳画
最後に一言
見に来て楽しいお店をめざしています。是非是非ご来店ください。活字を読むだけでなく映画雑誌、芸能関係の写真を見るのも楽しいです。
矢口書店矢口さん、ありがとうございました!
取材日 2022.9.24 ライター:みずも