2023/12/22 12:01

「ようこそ本の街、神保町へ!」 No.23 けやき書店

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今月紹介するのは日本の近・現代文学、主に無頼派の初版本を中心に扱っているけやき書店。取材に応じてくれたのは店主の佐古田亮介氏(68)。開業は昭和62年で平成9年に現在の店舗に移動した。無頼派とは戦後の混乱期に注目され、既成文学への批判から作風を同じくする作家たちであると批評家が命名した。太宰治、坂口安吾、織田作之助などの名があがる。佐古田氏は一誠堂勤務を経て独立し、神保町の古書店街を50年以上みてきたベテランだ。店の顧客は個人のコレクター、研究者だそうだ。日本文学への外国人の関心は意外にも高い。村上春樹はヨーロッパで、東野圭吾もドラマ化、映画化されていてアジア、中国といった外国からの問い合わせも多いという。店の本棚にはきれいにパラフィン掛けされた本が並べられている。一冊一冊、帯やカバーは大事。初版本とはその作家の作品が初めてかたちになって世に出たもの。だからこそ希少価値があり、コレクターがいるのだという。新刊は委託販売だから売る側が自分で選べない部分が相当ある。しかし古本屋は自分で好きなものを選んで売れる。新刊本と古本では客層がちがうし目利きや値付けは自分でするので在庫リスクは抱えるが古本屋IMG_6875.jpgの方がやりようで選択肢がある。本好きでなければできない、と佐古田氏。なるほどと筆者は思った。ファンとなる顧客がつけば古書店に利がありそうだ。ところで私たちは古書と古本を同じように語りがちだが、前者が絶版書で手に入れることができない価値があるもの、高額な値打ちあるものに対して後者はそれ以外の安価に売られるものということをきちんと区別しておきたい。書店の種類も路面にスペースをもった店を構えて購入する客が出入りする店売りと、けやき書店のように目録販売で顧客からの注文を受け路面でなくビルの地上階で商売するかたちがある。神保町の書店の多くが参加する古本の通販サイト“日本の古本屋”ではコロナの時期に売上が伸びたといわれるが従来から通信販売をしている書店は結果的に影響が少なかったということができる。現在神保町の書店街は店売り、目録販売といった店をあわせ公表数字では130店あまり(佐古田氏によると最大のときは組合加入で163軒という)で世界に誇る本の街になっている。これから再開発を控え、少しずつ街の顔が変わる一方で世代交代も合わせて進んでいく。「古書店街はなくなってほしくないけれど、実際どうなるか。行政にも関わってもらわないと残れない」と、将来の質問に応えてくれた。現在おさんぽ神保町で“のんべえ古書店主のちどりあし神保町”という連載コラムにも登場中。月に1回は同世代の書店仲間と飲みに行くのだそうだが神保町の飲食店も入れ替わりは多いらしい。終始穏やかな語り口の絵に描いたような“古本屋のオヤジさん”だ。

 

・・・けやき書店、佐古田さんありがとうございました!

 

 

取材日 2023.12.12 ライター:みずも