2023/07/11 18:53

「ようこそ本の街、神保町へ!」 No.18 内山書店

「ようこそ本の街、神保町へ!」 No.18 内山書店 

 神保町に百年以上の歴史をもち日中友好の懸け橋となった書店がある。街の目抜き通りでもあるすずらん通りのほぼ中央にある内山書店がそうだ。取材に応じてくれたのは営業部課長の高橋美千代さん。写真は現社長の内山深さん(51)。その創業は1917年、中国・上海で目薬の行商していた内山完造氏が妻の美喜氏と共に自宅玄関先で日本から本を取り寄せて現地の日本人に売っていたのが始まり。後に上海で随一の日本書店に成長、1935年には完造氏の弟の嘉吉氏が東京の世田谷で中国から書籍を取りよせて中国専門書店を開く。その後1968年に学生が多いここ神田神保町に移転。1Fは中国の語学、歴史、政治、経済、現代文学、旅行・地図など、2Fは中国の古典文学、芸術、武術CD/DVDほかタイ、インドネシア、ヴェトナム、韓国、インドなどのアジア諸国に関する書籍、3Fは中国・アジアの古書が置かれている。主な顧客は中国関係の研究者、それを専攻している学生で大学、図書館関係者だという。また中国からは政治的にセンシティブなものなど自分の国で手に入りにくい書籍も研究目的で探して購入している人もいるという。中国に企業が進出していることにともなってビジネス書の需要もある。更に近年はアジアカルチャーに興味のある人が増えてきているのだそうだ。店内の書棚には中国の書籍の日本語版、日本の書籍の中国語版がならぶ。中国でも日本コミック、小説、SF、ミステリーなどのコンテンツは人気がある。高橋氏に今の売れ筋を聞くと、輸入書でもやわらかなもの、コミック類、現代小説という回答が。中国でもメディアミックスが流行っていて小説をコミカライズしたりドラマ化して若い人向けにコンテンツ化している。日本で中華系のドラマを見てファンになった人が原書にチャレンジしている姿もあるのだという。

「ようこそ本の街、神保町へ!」 No.18 内山書店

中国でも有名な書店

今年の春頃からコロナでしばらく足が遠のいていた中国からの客も増えていると高橋氏。内山書店はその名が教科書に出ているくらい中国でも有名な書店だ。内山完造氏は日中文化人と交流を持っていたとされているが中国文学界に大きな足跡を残した作家である魯迅と親交があったことも大きい。当時の軍閥政府に目をつけられ、上海に逃れていた魯迅が内山書店を訪れていたことから関係が深まっていった。中国からの旅行者が日本に来たら内山書店に来てみたかったという記念来店も多いそうだ。人通りの多いすずらん通りに店をかまえ、ショーウィンドーをみながら中国のことと関係なくふらっと訪れる人もいる。こうした書店があるのだということを知ってもらうとともに神保町をもっと面白い街だな、と思えるようアピールできれば、と最後に内山社長が語ってくれた。

 

内山書店、内山さん、高橋さん、ありがとうございました!

 

取材日 2023.7.4 ライター:みずも