2023/05/16 19:44

「ようこそ本の街、神保町へ!」 No.16 悠久堂書店

 「ようこそ本の街、神保町へ!」 No.16 悠久堂書店

“その好むところを見て、以ってその人を知るべし”趣味をみればその人がわかるというよく知られた格言だ。今回紹介するのは料理、美術カタログ、山岳、動植物など趣味の書籍を扱う悠久堂書店。取材に応じてくれたのは3代目店主の諏訪雅夫氏(73歳)。社長は息子で4代目の雅也氏が継いでいる。創業は大正4年、長岡出身の雅夫氏の祖父の代に遡る。山の本は60年、動植物は50年、料理関係40年、展覧会カタログ20年、書道10年と様々なジャンルを長きにわたり取り扱ってきた。

店内は1階に料理本や美術展図録と書道本が、2階には山岳関係、動植物の本、技術書、山の雑誌のバックナンバーが並ぶ。主な顧客はリタイアされたシニアが多いというが、書道だと大東文化大学や二松学舎大学といった若い学生さんも来るそうだ。趣味は昔やっていたけれど、年をとってもう一度始めたいといった人も訪れるという。シニアの生活いききナビ2023年版によるとシニアの趣味ランキングには、旅行、ガーデニング、ボランティア、登山、読書や映画鑑賞といったものがあがる。「私は料理書を、娘は書道の本を扱っています。」と雅夫氏。趣味をもつということで人生がもっと豊かになる。趣味は自分が楽しむだけでなく、交友関係やコミュニティが広がり、認知症やうつ病の予防にもなるという。人生が長くなるにつれ仕事以外にどう時間を使うか、多くの人が関心を持ってこれから趣味に向き合うことになると思う。

世界中の人たちが神保町へ

 「ようこそ本の街、神保町へ!」 No.16 悠久堂書店

続いて4代目の雅也氏(44)に話を聞いた。古書店業界に入ったのは22年前、社長を継いだのは2023年からという。店内の美術関係の書籍は雅也氏が広げていった(美術展覧会のカタログの扱いは国内随一)のだそうだ。自身の店を経営する一方で同世代(4050代)の書店人たちと街の今とこれからをどうしていくか、よく情報交換をしている。次の世代(20-)の人たちも育っていると思う、と雅也氏。神保町の書店街は昔からの店もあれば新規参入する店もある。古書店を扱う市(いち)会運営で新旧入り混じった書店人どうしコミュニケーョンをとっていて、組合運営も全世代で支えていると語ってくれた。今、アフターコロナで街は人で賑わってきている。コロナ禍で書籍のネット販売が増えたということはあるが、これもひとつ武器と考えて、入口でネットから入って世界中で類をみない本の街・神保町に国内だけでなく海外からも実物を見に来てくれる機会が広がっているととらえているそうだ。つい先日ハリウッド女優のアン・ハサウェイが都内のブルガリホテルのオープニングのため来日した際に本好きで神保町の古書店街を散策したというエピソードも記憶に新しい神保町は海外の有名人、経営者などからも注目度は高いという。「昼間の人口を上げる活動が必要だと思っています。観光も兼ねて書店が楽しめるようになれば飲食もいっしょに盛り上がる。自分たちがインターネットでこういう本を扱っている、ということをアナウンスしていれば世界中の人が見ていて実際に神保町に本を見に来てくれるお客さんが増えてくると思います。」と、雅也氏はこれからの展望を見据える。
一方でインターネットはどんどんデータ量が増えていくので、今後はその管理も膨大になっていく。以前紹介した書店・書籍の検索サイトである、
「ようこそ本の街、神保町へ!」 No.16 悠久堂書店

BOOKTOWNじんぼう (jimbou.info)

日本の古本屋 / 全国900店の古書店が出店、在庫600万冊から古書を探そう (kosho.or.jp)

 のメンテナンスもこれからの課題だ。ネットの世界は進化していくがどう使っていくかという提案はこれからのデジタルネイティブ世代の人たちにも期待がかかる

神保町で書店の新規参入は基本的にウェルカム。街の新陳代謝にもなる。昔から残っている本屋が頑張って人を呼び込める街にして商売として成り立つようになれば、聖地に店を出すことがステータスにもなり、神保町に書店を構えたいと思う人がこれからも出てくるはず。むずかしい課題もあるが街ぐるみで新しく盛り上げる取り組みをしていけば未来が拓けるのではないか、と語ってくれた。

 

※書籍の写真は中国の古代版画の書籍(中国は文化大革命などで書物が流出、日本の東洋美術の研究は進んでいて、日本にある文献を中国の人が買いに来ていると話してくれた)

                                                                                                               

・・・悠久堂書店、諏訪雅夫さん、雅也さんありがとうございました!

 

 

取材日 2023.4.27/5.2 ライター:みずも