2022/10/01 10:38

おさんぽ神保町34号できました!

神保町ファンのみなさまお待たせいたしました!

おさんぽ神保町34号、10月1日発行しております。
今号も変わらずのご愛読をよろしくお願いします。


34号 2022年 10/1発行
配布場所はこちら!

〈読者プレゼント1〉

神保町シアターご招待券をペアで10組20名様
神保町シアター【http://www.shogakukan.co.jp/jinbocho-theater/

〈読者プレゼント2〉

「ドラマで韓国語1・2巻」(小学館集英社プロダクション刊)

1・2巻セットで5名様

読者優待

Hair Lounge THEORY、いいオフィス神保町byTUNEKURA、上等カレー神田小川町店 から素敵な特典!

内容紹介


・ 特集 神保町で本活!
・ 神保人に逢いたい 仏文学者・評論家 鹿島茂さん
・沢野ひとしの神保町から中国大陸へ 第6回 万里の長城で遭難寸前
・ 神保町古書店主がゆく 食べある記 第17回 キッチンカロリー本店
・帰って来た!のんべえ古書店主の「ちどりあし神保町」 ささ吟
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2022/10/01 10:37

第62回東京名物・神田古本まつり開催!

※催事はすべて感染状況により、やむを得ず中止になる場合があります※

第62回東京名物・神田古本まつり

■青空掘り出し市★ワゴンセール
10/28(金)~11/3(木・祝)
岩波会場、靖国通り会場
■特選古書即売会
10/28(金)~30(日)
10:00~18:00(最終日17:00閉会)
東京古書会館地下
■トークライブ 倉田英之×三上延 神保町放談パート7
10/30(日)14:00〜17:00 入場料500円
東京古書会館7階 受付開始10/1 〜
今年はチャリティーオークション、蔵書印まつりは開催されません。
また全国宅配便無料券の配布はありません。
※写真は過去の様子です
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2022/09/29 18:57

「ようこそ本の街、神保町へ!」 No.9 矢口書店さん

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今回紹介するのは矢口書店さん。取材に応じてくれたのは矢口哲也さん(59)。創業は1918年、の祖父の代に。映画・演劇・演芸・シナリオ・戯曲を専門に扱っている古書店だ。先代の父のときに映画、演劇というジャンルを取り扱いはじめ、今の矢口さんの代に更に演芸を加えていった。実際に専門にしたのは昭和50年だが、それ以前からもそのジャンルを扱う神保町の専門書店としてキネマ旬報にも紹介されていたのだそうだ。今では映画関係などを扱っている書店も増えているが、その当時はまだこの分野を扱っている店は珍しかった。店を訪れる人は脚本家、役者になりたい人、プロからアマチュアまでさまざま。その中には映画ファンでなくても多くの人が知っているあの有名な映画監督の名前まであがる。いろいろな世代の人たちが来るが昔に比べると子供の姿は少なくなった。それこそ僕たちが子供の頃はゴジラシリーズや東映まんがまつり、洋画のはしごをしてプログラムを買いに来ていたりしたものだった、と矢口さん。その手には「2001年宇宙の旅」の当時の映画のチラシが。店長と年齢の近い50代半ばの私にも懐かしい記憶がよみがえる。また店には共立女子学園や明治大学といった近くの学校、大学の演劇部の生徒や学生たちが店に広告の依頼や取材のため訪ねてくるという。そうした光景はまさにここ神保町という場所ならでは。もしかするとその中から明日のスターや名監督たちが現れるかも知れない・・・

このコロナで日本だけでなく世界中でも演劇、コンサートなどは中止を余儀なくされたことがあったのは周知のとおり。そのため中国、欧米など外国のコレクター、バイヤーも来なくなった。以前はアメリカのアジア映画を取り上げる大学の関係者が来ていたり、中国のバイヤーでは寺山修司が人気でその作品を買い求める姿もあった。そしてようやくコロナの第7波も収束へ。この10月にも古本まつり開催予定で活気がもどりつつある。

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コロナで古書店が新しく生まれ変わろうとしている

コロナの影響はマイナスばかりではない。大きく通信販売にシフトしたことだ。それをけん引しているのはBOOKTOWNじんぼう (jimbou.info)日本の古本屋 / 全国900店の古書店が出店、在庫600万冊から古書を探そう (kosho.or.jp)の2つのサイト。まだ訪れたことのない人はこの機会に是非アクセスを。「じんぼう」は以前この連載ブログでも紹介したが千代田区が予算を出して昨年2021年に新しくリリースされた。このサイトは神田神保町のオフィシャルサイトで古書店130店と数百万点の書物、アート作品が集められ、コロナ禍で神保町の古書店に実際に足を運べなくてもパノラマ写真のバーチャル店舗で神保町散歩気分を味わえる。またもうひとつの「日本の古本屋」は東京都古書籍商業協同組合が運営し、約980書店が参加、約600万冊の本が探せる国内最大規模の古書店ECサイトで近くリニューアルする予定だという。矢口さんは語る。うちも通販が増えた。お客さんも無駄なものを買わなくて済むし、送料が安いので地下鉄に乗ってここ(神保町)に来る方が高くつく場合もある。ただ通販サイトに載っているものを見て実物を見に来たり、神保町シアターで特集をみて面白かったのでその関連のものをさがしに店を訪ねてくるお客さんもいるのだと。実店舗と仮想店舗。このハイブリットなプレゼンがますますこれからの書店のひとつの姿になっていくのではないだろうか。

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※写真下は六代目三遊亭圓生が記した俳句・俳画

 

最後に一言

見に来て楽しいお店をめざしています。是非是非ご来店ください。活字を読むだけでなく映画雑誌、芸能関係の写真を見るのも楽しいです。

矢口書店矢口さん、ありがとうございました!

 

取材日 2022.9.24 ライター:みずも

2022/08/31 14:27

「ようこそ本の街、神保町へ!」 No.8 東城書店さん

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今回紹介するのは東城書店さん。創業は1975年。東城堅治さん(76)が同じ神保町で社会科学が専門の南海堂書店さんで6年間の住み込みの店員を経て独立開業した。取材に応じてくれたのは2代目を引継ぐべく修行中という神田古書店連盟の若手役員でもある東城ひろ子さん(35)。中国、韓国の古典籍(中国は清代以前、韓国では李朝期の本が中心)、和刻本漢籍、国書、中文書、中国関係洋装本を専門に扱っている。 顧客は国内だけでなく中国や欧米の大学図書館や教授など。発信元の中国が取引先となるのは何故か尋ねると、書籍は戦争や動乱(文化大革命など)によって流出する。中国には残っていないが日本に残っているものがあるのだという。書物の移動史についてある大学の教授によると中国の書籍(漢籍)は日本では明治後期から大正時代にかけて力をつけた財閥や新設の研究機関が美術品や漢籍な文化的価値の高い文物を海外から収集された。この時期、書物は中国から日本へと移動したとしている。丁度そのころ中国は清朝末期を迎え多くの文化財が海外に流出したという。そして現在は経済力をつけた中国に再び書籍のながれが向かっているのだそうだ。だが中国は10年くらい前まではバブルの様相でその当時は賑やかだったが、今はだいぶ落ち着いてきたと東城さん。このコロナ禍、書籍の動きにも影響がないか尋ねてみると、これまでもどうにか工面して大きく(物流に)変化はなかったそうである。開業してから目録販売で店売りをしたことはなく、専ら仕入れは東京古典会などの市場で行っている。中国にも物が送れなかったりしたが、最近ようやく発送が再開したと語る。

やはり本屋は神保町でなければ・・

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これまでのインタビューでベテラン書店人の方々から国内の取引先(大学、図書館など)の厳しい現状を聞いてきた。個人レベルでも文化的価値のある高額な書籍は学生が購入するのは難しく、相手は大学の教員、研究員などに限られる。今回インタビューに応じてくれた東城さんら次を担う世代の人たちは先輩書店人たちからの期待もあるなかで古書店、神保町の在り方をいろいろ模索し続けているにちがいない。 やはり本屋を続けていくうえで神保町でなければいけないなと。お客さんも集まるし、本も集まるし毎日市場に行って何かしらあるので・・と東城さんは語ってくれた。これからどういう情報発信をしていくか?そうした問いにはなかなか一筋縄に答えは出てこない。コロナ禍、一進一退ではあるが少しずつ日常が戻ろうとしているなか、今年10月には神田古本まつりも前回の3年ぶりの開催に続き第62回(10/28-11/3)が行われることになっている。期間中は数十万人が訪れるといわれる東京の目玉イベントのひとつだ。今まで恒例のイベントとしてやれたことができなかったコロナ禍。飲食などはまだ規制があるだろうがなるべく例年に戻そうとしている。神保町の街に活気が戻ってくることでみんなの気持ちを前向きにし、少しずつ先の未来を明るくしてくれることを願ってやまない。期間中、東城さんたち連盟の役員は大忙しだ。

※写真は、

(上)清朝末期の子孫繁栄を描いた版画 (下)1550年頃の絵入りの漢籍

 

最後に一言

 

目録、通信販売専門ですが、店頭で商品をご覧いただくことも可能です。どうぞお気軽にお問い合わせください。

東城書店東城さん、ありがとうございました!

 

取材日 2022.8.19 ライター:みずも

2022/07/22 14:44

「ようこそ本の街、神保町へ!」 No.7 一誠堂書店さん

今回紹介するのは一誠堂書店さん。取材に応じてくれたのは店主の酒井健彦さん(75)。

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同書店は国文学、歴史、民俗、宗教、郷土史、美術。和本、洋書など文科系古文書全般を扱っている。創業は明治36年、祖父の宇吉氏が同郷の長岡出身の大橋氏が営む神保町の東京堂書店さんで3年の丁稚奉公の末、独立開業したという。神保町周辺はその昔武家屋敷で、その跡地に大学ができ、出版社、取次、書店などが集まったという経緯がある。先輩が使ったものを古書店が買い取ってまた次の学生が使う、リサイクルによって本が流通していった。一誠堂さんは本の街、神保町にあって創成期から書店を構えている老舗の一角だ。以前取材した沙羅書房さん、崇文荘書店さんはじめ神保町の表通りに店を構えるほかの書店も一誠堂書店さん出身者は多い。お店で扱う本について聞いてみる。日本に来たヨーロッパの宣教師などの外国人が異質の文化に接して驚き、日本の状況を書き記してローマ法王に報告したり本国に伝えた。それが桃山時代からあった。アメリカもまだ国として誕生していない頃の話だ。江戸時代にも鎖国で外国人が来てないようで実は来ていて、日本の情報が伝わっていた。そんな昔、西洋の人が日本をどう見ていたか知る興味深い書籍を取り揃えている、と酒井さん。

店の取引先は国内外の大学、図書館、美術館が多い。しかし今は高額で買い取ってくれるところが少なくなった。何より日本の研究機関などは海外に比べて予算がないのだという。海外ではハーバード大学でアジア関係図書館ができたが蔵書の2/3は中国のものが占めているという。日本研究が脚光を浴びることがあるとはいえ、かつては日本の図書が1/2を占めていた時に比べると、国の勢いというのは研究対象となる図書にも影響を与えてしまうのだ。また酒井さんは現在の供給過多になっている古書業界の流通事情について話してくれた。今でも大学の教授など個人のコレクターから本を仕入れているが、一方で買い手でもある。ところが本を買ってくれていた世代の先生が亡くなるとまたその先生の持っていた本が市場に出回るようになる。さらに戦後70年経って蔵書が十分溜まり、図書館も逆に本を売る時代。これが30年くらい前だったら次のコレクターが出て来たが、今はそれを買う人、フォローする人が減ってきているのだそうだ。研究機関などもネットと設備にお金をかけて本代には回らないという。

やはり本に興味をもってもらわないといけない。今の学校教育はますます実利思考で理系に比重がおかれてしまっている。もっと文系の教育を見直さないと、ものを読む力、考える力が衰退していってしまうのではないか?酒井さんは疑問を投げかける。リベラルアーツという文系、理系の区別をこえた教養教育の見直し論がある。今は問いを作ることや、話し合って思考の相互作用を起こすことを求める傾向があるというが、歴史、哲学、宗教などの教養はすぐに使えない知識であっても先の答えが見いだせないこれからの時代にこそ必要と言えるだろう。

次に神保町を担う人たちへのメッセージ

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酒井さん自身も神保町で生まれ、学生時代は外で過ごしたというが長くこの町を見てきた一人だ。この10年、20年の間に表通りから古書店が減っている。確かに書店業界は苦戦しているが、活字の文化はなくならない。一歩裏通りのビルで事務所を借りて販売はインターネットを通してやっている新しい古書店が出てきている。廃業はあっても書店自体の件数はそれほど減ってないのではないか。さらに最近ではシェア型書店など棚主、お客のコミュニティづくりに注目した新しいながれもあるがこれからを見守る必要もあると思う。書店人同士では市場をとおして本の売り買いだけでなく人と人、世代の架け橋となって自然と交流が深まる場がある。ネット社会ともうまくつきあってやっていくことも大事。若い人がどんどん業界に出てきて、研鑽を積んで頑張ってくれれば良い芽が出てくるのではないか。

最後に一言

古書をより手にとりやすく、身近に感じてもらえるよう、ホームページの情報の充実を図っています。最近では映画、演劇関連も力をいれています。

一誠堂書店酒井さん、ありがとうございました!

ライター:みずも(2022.7.5取材)