編集室だより

ミロンガヌオーバ

2016年 6月 8日by  島田 敏樹
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ミロンガヌオーバは、その昔ランボオといい、1947年(昭和22年)出版社によって神保町の路地裏に創立された喫茶店でした。
昼間から酒が飲めるお店ということで、三島由紀夫、遠藤周作、吉行淳之介等の作家と編集者のたまり場になります。
その頃、一人の美少女がウェートレスをしていました。少女は作家たちのアイドル的な存在です。そんな少女に作家のひとりがプロポーズをしました。作家は武田泰淳、美少女は後に武田百合子となります。

タンゴの音楽が聞こえてきました。ランボオは1949年(昭和24年)になくなり、現在はタンゴの音楽の流れる喫茶店ミロンガヌオーバです。
店内には、バンドネオンが飾ってあり、レジの後ろには古いレコードと蓄音機が置いてありました。

ウエイトレスさんが、注文したメキシカンジャンバラヤとワインを持ってきてくれます。

ミロンガヌオーバの時代になり、平成を迎え一人の女性がウェートレスをしていました。

春は開け放たれた扉から爽やかな風を感じ
夏にじょうろで路地に水をまき
秋の肌寒さにさびしさを覚え
冬はすきま風に寒さを感じ

ホームレスのあさこと言葉を交わし
ホームレスのジミーが街から追い出されたことを憤り

カウンターの中から

ビールをもう一本注文して、リクエストした「奥さま御手をどうぞ」を聞いて静かに涙ぐみ、帰りがけに「大好きな人と。お別れしたんです。」といったおじさん。

この店で母が働き、父がお客としてきていて、両親の出逢いの場だとお店をスケッチしている若い女性。

タンゴと煙草を愛していた死んだお父さんがこの店によく来ていたからと、むかしお父さんが吸っていたのと同じ煙草に火をつけ、ゆっくりと味わう男性

いろんな人生を見守っていました。

そんな彼女は
2冊のエッセイを残して、
そして、
ミロンガヌオーバの鼓動であるタンゴのリズムがいつまでも止まらないことを願って、
亡くなりました。

ワインを飲み干して、ミロンガブレンドを注文しました。

珈琲豆を挽いた香ばしいにおいがしてきます。
壁には世界のビールが飾ってありました。

彼女は教えてくれました。
「タンゴは人生そのものだ」と
そして
タンゴの永遠のテーマは
「愛と孤独と」
であると。

神保町タンゴ喫茶劇場 堀ミチヨ 著  新宿書房
神保町書店及びミロンガヌオーバにて販売中です。

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