本の街・読書人の会

【読書日記003】やはり人間は温もりを求める-「センセイの鞄」

2009年 5月 24日by  sugiyuzu
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おはようございます。

更新に少し間が空いてしまいました。

本日の1冊はコチラです。

「センセイの鞄」 川上弘美 文春文庫

高校時代のセンセイと生徒。

2人が十数年ぶりに再会し、お酒を飲み交わし、

次第に惹かれ合っているラブストーリー。

プラトニック過ぎない純愛が、じわじわ心を温めてくれる1冊です。

定年過ぎの老人と30代の女性。

普通ではない設定の世界は、やはり普通ではないストーリが待っています。

小説の舞台のほとんどは、行きつけの居酒屋さん。

お互い連絡も取るでなし、気の向くままにお店に行き、

別々の客としてお酒を飲んでいる。

口では言い合っているけど、相性の良い2人。

次第に、センセイと生徒の関係を越えていく・・・

また国語の先生らしく、俳句や小説の引用で譬えたり、

年甲斐もなくきのこ狩りへ行ったり。

何か渋いんですよね。

2人ともお互いを意識しないようにしているのに、あることをきっかけに

壁を越えることになります。

それは、主人公の女性ツキコの同級生。

彼がいろいろ誘ってくるにつれ、センセイもツキコも、自分の気持ちに

素直になっていきます。

そんな展開に、ドキドキというよりじんわり「何か」が心を支配して

いくんです。

「何か」は、まだ分かってないんですが・・・

きっと「男らしさ」「女らしさ」を超越した人間の本源的な魅力、とは

老化するより、年とともに増すのだろうと思う。

実は私、この小説では2人の愛より他のことに思いを馳せていました。

この舞台、ほとんどがセンセイとツキコの2人しか出てきません。

そして、随所に出てくるのは孤独感。

「一人」という言葉が多用され、それとセンセイの温もりとが

コントラストを織り成しているように感じます。

ちょうど寒い日に、あったかいカイロを持ったときのような、

じんわり温もりが伝わってくるような・・・そんな感じ。

ツキコの「一人」に対する考え方が、また共感を持たせてくれます。

例えば、きのこ狩りに行ったときの引用です。

「こんなに多くの生きものにかこまれているのが、不思議だった。

町にいるときはいつも一人、たまにはセンセイと二人、

でしかないと思い込んでいた。

しかし町の中にいるときだって、よくよく注意してみれば

多くの生きものに囲まれているのに違いない。」

人間って不思議なもので、誰かといても、賑やかな場所にいても、

孤独を感じるものなんですよね。

でもそれって「感じてる」だけで、実際にはそんなことない。

町にいれば、見知らぬ人が沢山いるし、

携帯電話の普及した今では、会おうと思えばいつでも会えるし、

話そうと思えばいくらでも話せる。

それでも孤独をぬぐえないから不思議だ・・・

孤独に慣れた大人は、かえって一人のほうが楽しいと思い込む。

本当にそう思ってるときもあるし、単なる強がりのときもある。

もう1つ引用します。

「一人で今まで楽しく生きてきたはずだったのに、どうしたことか。

—(中略)—

しかしほんとうに、今まで一人で「楽しく」など生きてきたのだろうか。

楽しい。苦しい。きもちいい。甘い。苦い。しょっぱい。

くすぐったい。かゆい。寒い。暑い。なまぬるい。

いったいわたしは、どんなふうに生きてきたんだったっけか。」

やっぱり人は、一人じゃ生きていけない。

どこかに温もりを求めている。

どんな人生だったかは、誰と過ごしたかで決まるとは言い過ぎか。

手持ちぶさたな左手は、誰かの温もりを探してる。

見つからないときは、そっとポケットに戻してみる。

その繰り返しなんだろうな。

何だかスッとした、爽やかな読後感が得られる1冊。

肩肘張らず、ゆっくりゆっくり。

アンダンテでいこう。

そう思いました。

恋愛小説ですが、自分を見つめなおすのに良い本です。

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